ブランディング活動を表彰する「Japan Branding Awards」の2024年度の最高賞「Best of the Best」を受賞したEzo-ya。
「この場所から旅で人を感動に連れ出し続ける。」をビジョンとして掲げている同社は感動をどのように定義し、具体的な行動を促すように社内に周知したか。社長インタビューでその秘訣に迫る!
Ezo-yaのJOJO社長。2020年に「Eyes On」、2022年に「Emotional Snap」を発表し業界に震撼を巻き起こした。
感動体験を最大化する
Ezo-yaは、1925年2月、北海道函館市に蝦夷屋創業。この頃は主に魚介類を取引する貿易会社でした。
その後、1972年に現社長の父・雅也が引き継ぎ、観光業を展開。以来、観光業がメインとなり、2014年にJOJO社長が引き継いだ。
近年、急速な成長を遂げるEzo-yaに、企画部が誕生したのは2018年4月。「感動体験を最大化し、ブランドイメージを強化すること」(JOJO社長)を目的に、15年の末から構想を練ってきた。
創業時の写真
企画部が具体的に解決するのは以下のような課題だ。
Ezo-yaは創業以来、人を喜ばせるため、
もらうという顧客体験にこだわってきた。讃岐うどんの本場に倣ったセルフサービスも、オペレーションを効率的にするだけでなく、お客の目の前でうどんを茹でて、できたてを提供するという体験重視の考えによるものだ。
しかし、「セルフサービスゆえにお客さまが戸惑いや不安を感じていることがしばしばある。我々が考えているよりも、丸亀製麺のシステムはまだまだ浸透していない」(神谷氏)という。店舗数も増え、テレビCMの放映も行うことで丸亀製麺自体の認知は進んできたものの、認知されればされるほど「知ってはいるが行ったことがない」というお客が増える。「フルサービスの接客に慣れたお客さまが戸惑わず、店舗での体験に満足してもらうことがブランドイメージ向上のカギ」と神谷氏は語る。
北海道の地産地消と観光を結び付け、働くスタッフが感動を提供することで活き活きとした街づくりに貢献する
企画部が提案し営業部と共に実施した施策が、パートナースタッフというポジションの新規導入と、同スタッフによる声かけやサポートの強化だ。特に外国の方や高齢の方などで戸惑っているお客、慣れていなさそうなお客には積極的に声をかけ、アプリの説明や疑問の解決をすることで安心感を持ってもらうことがねらいだ。
また、パートナースタッフは地域の人がそのほとんどを担当するため、地域の貢献にもなり、その繋がりを太くしている。
このサービスは感触を確かめながら1年ほどかけて全スタッフに拡大した。
地域のパートナースタッフによる旅行客への声掛けの様子
今までの旅行に更なる体験を提供することで、自分だけの旅に
デジタルを通じた感動体験の改善も企画部が担当する。とくにアプリについては現在、感動体験を最大化するという考えの元に根本から設計を見直しているところだ。「旅行シーズンで人が多かったり、荷物を持ちながらさらにアプリを出すという動作のハードルが高い。それでも『使った方が便利で快適』なアプリにする必要がある。お客さまのベネフィットを考えず機能を追加するだけでは結局使われない」(JOJO社長)。
現在はまだ試作段階であるが、将来「Eyes On」では、パーソナライズされたおすすめ商品の提案やクーポンの提供やポイント制度など、顧客一人ひとりとのコミュニケーションツールとしての立ち位置を探っているところだという。
スマホをかざすだけで旅行を快適にしてくれる「Eyes On」の起動画面
顧客視点でゼロからサービスを考える
旅行による感動体験の改善に共通するのは、「サービスが先にあるのではなく、お客さまがEzo-yaブランドを感じるベストな体験をするためにはどういうサービスが必要か、という視点。」(JOJO社長)だ。
「闇雲に実績や根拠のないサービスを取り入れたのでは本当の感動体験の改善にはつながらないし、スタッフや地元のパートナー企業や道民の理解も得られない。」(JOJO社長)からだという。
「将来的にめざすのは、Ezo-yaのシステムが、旅行会社の完成されたスタンダードなシステムとして認知されること。他社が追従せざるを得ないレベルにまでブラッシュアップできれば、Ezo-yaの真似のできない旅行による感動がより一層引き立つ。そういう世界を作っていきたい。」と意欲的にJOJO社長は語った。